Contemporary Art
極小美術館
Asano
Eri
浅野
絵理
2022.11/6(sun)~ 2022.12/4(sun)
espoir 39
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料ひとりで立つ浜辺のように 浅野絵理の作品
かすかな墨色で摺られた線の集積。紙の白によって画面は明るい。だが、見ていると、その明るさとはむしろ反対に、わたしは真夜中の浜辺にひとりで立っているような気持ちになった。
ある種の規則を保ちながら注意深く手の動きをくりかえして作られた画面は、丹念に紡ぎ出された糸でできた織物のようだが、なめらかに仕上げたパネルに貼られることによって紙本来のしなやかさは硬質なものに変わり、磨き出された大理石のようでもある。
はじめ、わたしは浅野絵理の大きい作品も見てみたいと思った。そのほうが、制作にかけられた時間の経過や、取り憑かれたように彫り進める作者の偏執的な部分が現れて、さらなる力強さを感じられるのではないか、と期待したのだった。その要望に応えて彼女は、糸目の入った和紙をいっぱいに使い、パネルを2枚つないだ作品を見せてくれた。その印象を捉えようと、わたしはカメラを持って離れたり近づいたりしながら撮影したのだが、そのうちに、ファインダーから見た「部分」の面白さに気づいて思わず声をあげてしまった。この人の作品は、息を止めるようにして近づいて見た時に、最もよくわかるのではないか。作者が、表現への不思議を感じながら、どんなふうに手を動かして版を彫り、摺り、仕上げたか。ある種の狂気を秘めながらも、それによってねじ伏せるようなものではなく、冷静な探究心がそこにはある。それが感じられれば、部分でさえどこまでも続くような広がりを放ち始めるのだった。
手に取るような近さで発揮される魅力は版画の特徴でもある。転写という版の間接性も彼女は味方につけている。かすかな濃淡の違いを求めて摺りをくりかえし、気に入ったものができたところでその工程は終わるという。汲み尽くされることのない探究心が、浅野絵理の表現の根底にある。
白く明るい画面から夜の海のような幻影を見てしまうのは、わたしだけだろうか?
穏やかに重なる(2022年制作)
和紙、墨 木版画
ショートステッチ(2022年制作)
和紙、墨 木版画
flowing(2019年制作)
和紙、墨 木版画
ステッチ(2021年制作)
和紙、墨 木版画
ステッチ(2021年制作)
和紙、墨 木版画
浅野絵理
- 【略歴】
- 1989
- 岐阜市生まれ
- 2008
- 岐阜県立加納高等学校 美術科 卒業
- 2012
- 愛知県立芸術大学 美術学部 美術科 油画専攻 卒業
- 2014
- 愛知県立芸大大学院 美術研究科 博士前期課程 油画・版画領域 修了
- 【主な展覧会等】
- 2012
- 第37回全国大学版画展 (町田市立国際版画美術館 / 東京)
- 2013
- 第38回全国大学版画展 買上賞 (町田市立国際版画美術館 / 東京)
- 2013
- 落石計画クロニクル2008-2015 (アートラボあいち / 愛知)
- 2014
- 第8回大学版画展受賞者展 (文房堂ギャラリー / 東京)
- 2017
- 落石計画第10期 クロニクル 2008-2020 - 痕跡と展開 - (旧落石無線送信局 / 北海道)
- 2020
- 金森満理奈・浅野絵理 二人展「For my rest」 (フランス料理レストラン オー・エ・セル / 岐阜)
- 2021
- 現代美術の作法 2021 (極小美術館 / 岐阜)
- 2021
- 篠田守男と極小美術館の作家たち (アートスペース羅針盤 / 東京)
- 2021
- LIFE-SIZE GIFU (MITONO HAIR and E / 岐阜)
- 【コレクション】
- ▪︎町田市立国際版画美術館
- ▪Lucca445
- ※開催時点