Contemporary Art
極小美術館
Tsuchiya
Akiyuki
土屋
明之
2023.3/5(sun)~ 2023.4/9(sun)
espoir 40
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料関係性の中で
東京美術学校の設立や日本美術院の創設に貢献し、またボストン美術館の中国・日本美術部長を担った岡倉覚三は、1906年にニューヨークで日本美術の精神を伝える『茶の本』を出版した。そのなかで「真の美はただ「不完全」を心の中に完成する人によってのみ見いだされる」と述べている。それは茶室に関する記述の中のことであるが、見方を変えれば日本の美意識の特質の一つともいえるだろう。つまりものが置かれることは空間との関係性にも意識がむけられることにも通じる。作品自体が一つの究極の完成形を作り上げることを目標とした欧米の美術哲学とは一線を画し、作品の完成がある空間の置かれることで初めて完成と言えるという視点を示している。
土屋明之の作品作りは、どこかそうした視点を思い起こさせるものが底流に流れている。突き詰めた形を追いかけるのではなく、作品の周りとの関係に意識を向けさせ、さらには鑑賞者との関係性にもつながっていくものであろう。
立体作品制作は大学時代の西欧的なマッスを意識した石彫からスタートしたが、もっと軽やかで、身の回りの素材を組み合わせて提示したり、種子をテーマにして蜜蠟のような有機的素材を使うようになったりして、一層自然との親和性が増すように変化してきた。そこには気負いのない自然体で素材に寄り添いながら自分の世界を構築し、古びた建築を主題にしたインスタレーション的な手法での作品提示も見られる。
30年ほど前のことであるが、世界文化自由都市「京都」を標榜して開かれた第1回「芸術祭典・京」の公募「京を創る」では三木多門らが審査員を務め、彼の作品が大賞に選ばれた。円山公園に設置された作品《原風景》は、仮構ともいえる造形物=インスタレーションであったと記憶しているが、今回のプランでもそうした遺伝子が顔をのぞかせているようだ。新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックやロシアのウクライナ侵攻による影響は我々の生活にただならぬ影響を及ぼしている。作品を発想するときに意識するにしてもしないにしてもそうした世界の状況と作品制作をする美術家とは無関係でいられない。
今回のプランを聞いた時に「崩れた建物」とか「廃屋」という言葉が作者から発せられたのは、ニュース映像で目にするウクライナの惨状と無関係ではないだろう。時代を生きる美術家として目にする事象とどう切り結ぶかは大きな課題となるだろう。とはいえあまりに直接的な表現ではある種のプロパガンダと変わりなくなってしまう危うさも宿しているだろう。彼がどのようにまとめあげるのか大いに期待したい。
「蜜蝋の町」(2021年5月制作)
革、蜜蝋
「空を映す」(2022年6月制作)
革、蜜蝋、錆塗料
「盾」(2020年1月制作)
革、蜜蝋、べニア板
「蜜蝋の家」エスキース(2022年11月制作)
革、蜜蝋
「ドロバチと家」(2014年1月制作)
べニア板、錆塗装、泥、珪化木(石)
土屋明之
- 【略歴】
- 1954
- 岐阜県多治見市に生まれる
- 1977
- 大垣市野外彫刻展 ※~1984 (大垣市)
- 1980
- 岐阜大学教育学部美術工芸学科彫刻研究生修了
- 1983
- 個展 (瑞穂市)
- 1985
- 個展「土屋明之石彫展」 (岐南町図書館中庭)
- 1986
- 第1回岐阜現代彫刻シンポジュウム (岐阜市畜産センター)
- 1986
- 戦後生れの作家たち<立体部門> (岐阜県美術館)
- 1986
- 第3回岐阜建築研究会展出品 ※~1992 (岐阜県美術館)
- 1986
- 岐阜県立関養護学校創立20周年記念『はぐくむ』制作 (関市)
- 1987
- ’87朝日現代クラフト展奨励賞受賞 (大阪市)
- 1988
- 池田野外彫刻展 ※~2005 (岐阜県立池田高等学校中庭)
- 1989
- 個展「四季レリーフ展」 (岐阜市)
- 1990
- 6作家による『後藤家ねね』オブジェ制作 (岐阜市)
- 1992
- 「アート・フロム・『エコ・ワールド』彫刻展 (岐阜県美術館 ・加茂郡白川町)
- 1992
- 芸術祭展・京-「京を創る」大賞受賞 (京都市)
- 1993
- 個展「原風景展」 (岐阜市)
- 1993
- 個展 道の駅オープン記念「原風景ひだ清見 インスタレーション」 (清見村)
- 1993
- 平成4年度県芸術文化活動等特別奨励賞受賞 (岐阜県)
- 1994
- 「原風景’94」 (岐阜市)
- 1995
- 「見たい見せたい美術展」出品 ※~2005 (岐阜市、可児市、郡上市)
- 1996
- 加藤洋二・土屋明之「こころのかたちー祈りの姿」 (岐阜市)
- 1997
- 「歌となる言葉とかたち」展 ※~2017 (郡上市)
- 2001
- 個展「こころの片隅・断片」 (本巣市)
- 2002
- 個展「こころの片隅」 インスタレーション制作 (岐阜市)
- 2003
- 個展「土屋明之展」 (岐阜市)
- 2004
- 岐阜県芸術文化奨励受賞 (岐阜県)
- 2006
- 個展「太古の原風景」 (岐阜市)
- 2007
- じゃんけんぽん展に捧ぐ「ひょうたんのぞき道展」出品 (岐阜県現代陶芸美術館)
- 2012
- 「アートはちから(障がい者アート展)」 ※~2014 (各務原市図書館)
- 2015
- 個展「空から種が」 (郡上市)
- 2016
- 「雑魚展」 ※~2023 (岐阜県美術館等)
- 2016
- 「岐阜県芸術文化会議芸術祭展」出品 ※~2023 (岐阜県美術館等)
- 2018
- 個展 (極小美術館)
- 2019
- 「10周年記念展」出品 (岐阜市)
- 2019
- 個展「月へのオマージュ」 (高山市)
- 2019
- 「手で見るアート展」出品 ※~2022 (岐阜市)
- 2020
- 個展「原風景」 (岐阜市)
- 2022
- 「蜜蝋 革 麻 絹 二人展」 (岐阜市)
- 2023
- 個展「蜜蝋の家」 (極小美術館)
- 現在
- 岐阜県芸術文化会議会長、公益財団法人岐阜県教育文化財団障がい者文化芸術アドバイザー及びTASCぎふ総括(障がい者芸術文化支援センター長)、TA工房主宰、2023AAIC運営委員会会長
- ※開催時点