Contemporary Art

極小美術館

2022.3/6(sun)~ 2022.4/10(sun)

espoir 36

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

頑なに素直なままで 

廣江泰孝 (岐阜県美術館学芸員)

 絵画の分野と同様に、戦後日本の彫刻もまた、存在と場の問題において、大きな変革期を経て今日に至る。彫刻家たちが、素材に体当たりして、自身の中に渦巻く時代の流れを堰き止め、あらがいながら、自立した表現を目指していた1970年代に、出発点を持つ作家である。あの頃、日本の美術を先導した彫刻における造形としての豊かさ、自在さに、直接触れて制作していたという思いが、柴山の人懐っこい独創的な作品の芯棒にはある。
 彫刻ほど身体と表現が直結する造形芸術はない。柴山は木に触発されながら、木の生命力を活かした制作をしていくなかで、次第に動的な姿をイメージの源に置いた存在領域を表すことに向き合いはじめる。
 その変化を最も印象づけたのは、2016年に開催した「歌となる言葉とかたち」展(古今伝授の里フィールドミュージアム・郡上市大和町)で、鍾乳洞の石筍に似た有機的なかたちが、地面から群れて立ち上がる作品《ニョッキ2016 Ⅱ》を発表した頃からだろう。雨に濡れた表面は、均一な合板木口の連なりを際立たせ、自然と同化しながらも、空間を作品に取り込んだ、特別な場を周辺に創り出していた。合板を積み重ねた人工的な層による木目が生み出す造形美に、木彫としての新たな表現の可能性を見出していく。
 柴山の作品作りは、日常の中に見つけたモーションを、可変するかたちに置き換え、絵画的なアクセントを構成要素として作画に用いつつ、残しつつ設計し、切り出した合板を組み上げ、積み上げて、あてがいながら、接着することからはじまる。積層し、圧着することで、自由な大きさの均一な木の塊を得ることができ、尚且つ、それらを組み立てることで、形や大きさにおける制約から、解放された制作を可能としている。素材の自在さを思う存分活かしながら、削り込んでいく作業を繰り返す。イメージの構成要素からなる静の姿を支持体としながらも、前面には表現のイニシアチブをとる動の姿が現れてくるよう、手跡を呼応させてかたちを成す。柴山独自の磨き込みによる造形的特徴がみられる。ただし、自分にとっての本来あるべき姿をなんとするのかについては、これから向かう先にあるように思える。変貌直中の頑なに素直なままでいる作家である。

DMイメージ

ニョッキ2017 Ⅰ
杉合板 w4800 × d4800 × h3800

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ニョッキ2016 Ⅲ
杉合板 w450 × d450 × h650

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モクモク2018 Ⅲ
杉合板 w750 × d450 × h450

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キリッツ2020 Ⅰ
杉合板 w450 × d450 × h600

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ニョッキ2016 Ⅰ
杉合板 w450 × d450 × h850

DMイメージ

柴山豊尚

【略歴】
1955
岐阜県各務原市生まれ
1980
武蔵野美術大学大学院造形研究科修了
1981
岐阜県内中学校勤務
【個展・グループ展等】
1975
彫刻村展・彫刻村参加 ※~2021年 (岐阜県美術館、名古屋市博物館他)
1977
第7回現代日本彫刻展 エスキース展 (山口宇部)
1978
個展 (村松画廊・東京)
1978
第12回日本国際美術展 群馬県美術鑑賞 (東京都美術館・東京)
1979
個展 (ときわ画廊・東京)
1979
個展 (村松画廊・東京)
1982
個展 (ASG・名古屋)
2011
歌となる言葉とかたち展 ※~2016年 (古今伝授の里フィールドミュージアム・岐阜郡上)
2017
2017Art Award IN THE CUBE 大樋長左衛門賞 (岐阜県美術館)
2018
柴山豊尚展 (各務原市図書館・岐阜各務原)
2020
MUSA-BI展 (極小美術館・岐阜池田)
【パブリックコレクション】
■群馬県立近代美術館
※開催時点