Contemporary Art
極小美術館
Kato
Yoshiro
加藤
由朗
2021.4/25(sun)~ 2021.5/30(sun)
espoir 32
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料加藤由朗のイラスト
さまざまな制約を気にもせず、常にやる気満々。目指す方向が決まれば、瞬時に筆を走らせるだろう加藤由朗のイラストレーションへの取り組み方を、驚きの目でみてきた。太目の黒い線をスピーディーに走らせ、鮮やかな色を加えて良し悪しを即座に判断、迷いなく闊達に伝える大胆さである。
ここ数年、加藤は大垣まつり等のイベントに合わせ、多くのリーフレットやポスターのデザインを手掛けているが、その勢いは今も止まらない。
1982年5月、フィンランドで行われたラハティ・ポスター・ビエンナーレに、私は国際審査員の一人として招かれ、ポスター大国ポーランドからなど、集まった6ヶ国のデザイナー達と3日間にわたり、2,000点有余の作品を審査する。文化部門に出品されていた加藤由朗の「コンサート」をモチーフにしたポスターは高く評価され佳作賞を授賞。加えて各部門合わせて3点以上の出品作家に与えられるグランプリ候補の一人になったことも記しておきたい。
今回「加藤由朗のイラスト」と題する拙文を書くにあたって、織田信長とリィス・フロイスの出会いをモチーフにした加藤由朗の一連のイラストストーリーを改めて見る。
いまから30年も前の1989年に描き始めたものと聞くが素朴で新鮮。線描に頼らない平明な色分けによる描写は極めて印象的、その展開に目を奪われる。
まずはじめに、信長とフロイスの立ち話するシーンから述べてみよう。遠くには明智光秀の姿も見られる赤茶色に塗られた背景の前で、向き合う二人の姿は対象的に描かれ、きわめて強烈。やや腰をかがめ気味に話す信長の顔は極端に小さく青ざめて描かれ、彼の不安を象徴しているかのようだ。一方、金髪で大顏のフロイスの表情には変化が見られす、十字架がのぞく漆黒のマントを着て立つ姿は泰然として次なる展開が待たれるシーンであろう。
また、地球儀を指しながら向き合う二人の顔をアップに描いたものはシンプルで明快、このシリーズを象徴するポスターと言えようか。また腰の力をはずして椅子にぽつねんと坐る孤独な信長のポスターも秀逸。加えて、この物語の舞台である金華山山頂の岐阜城からの城下を眺めながら、二人が談笑するシーンは見る人の想像力をかきたてる。 今回の後楽荘での展示は、描き溜めてきたアイデアスケッチを活かし、光秀と絡ませた三者の遭遇を作品に仕上げたもので構成しているという。
ともあれ信長とフロイスの二人に向き合い、スポットを当てて描かれたこのイラストシリーズは、後世にも残る名作の一つとして語られ、永く記憶されるに違いない。想像力の大きさと斬新なアイデア、強烈な気力で描き続ける加藤由朗のさらなる活躍を祈りたい。
VIEW‐45(2020年制作)
VIEW-43(2019年制作)
- 【略歴】
- 74〜
- 国内外のポスターコンテストに出品
- 1981
- ラハティポスタービエンナーレ佳作賞(フィンランド) ※1987年、2014年
- 89〜
- 織田信長とルイス・フロイスの出会いをモチーフに〔財〕岐阜コンベンション・ビューロー(現〔公財〕岐阜観光コンベンション協会)のデザインに携わる
- 1998
- ワルシャワポスタービエンナーレ銀賞(ポーランド)
- 2004
- 個展「ちいさいぼくたち」(北ビワコホテル・グラツィエギャラリー)
- 2009
- テヘラン国際ポスタービエンナーレ審査委員賞(イラン)
- 2010
- 個展「加藤由朗展」(極小美術館) ※2018年
- ユー・グラフィック主宰
- ※開催時点