Contemporary Art
極小美術館
Sato
Masahiro
佐藤
昌宏
2020.5/10(sun)~ 2020.6/28(sun)
No.32
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料心の闇と不条理な世界を描く
佐藤昌宏が描く、人間や奇怪な生物たちがうごめき絡み合いながら、観るものに強く迫ってくる異様な世界。その作品を前に立つと、言いようのない戸惑いを感じながらも、思わず作品を凝視し、気が付けば自分もその異界に引きずり込まれてしまっているような感覚さえおぼえることがある。
彼の作品は、怪奇で幻想的な世界に人間の欲望や罪を浮き彫りにしたヒエロニムス・ボスや、その影響を受けたピーテル・ブリュ-ゲル1世のいくつかの作品を想起させる。確かに佐藤が描く異界、荒唐無稽ともいえるような生物たちが跳梁跋扈する情景は、時代を超えて彼らの作品と重なり合っている。また、それは同時に日本や東洋の思想、絵画の伝統にも深く根ざしている。六道輪廻、とりわけ地獄絵に代表される仏教的な世界観、また曼陀羅図や阿弥陀来迎図など、それらに基づく絵画の主題や画面構成を特徴とする彼の作品に、それは端的に示されている。そこには時代や空間の隔たりを超えて、人間世界の闇の部分を現代へと結び付け、まさぐるかのようにして表現しようとする姿勢があらわれている。
近年は「地のいきもの」と題されたシリーズで、風景のなかに異形の犬や魚を巨大な姿に描くといった新たな展開が示されていて、それが今回も注目を集めることになろう。この犬は、いわば現代社会のひずみや不条理なものを背負わされている「保護犬」がモティーフになっているとのことである。
佐藤は、誰もが目を背けているような世界、心の闇を暴きつつも、それを冷静に美に昇華させようとしている。何故にそのような世界を描くのか、それは人間も動植物も深いところでは区別なく繋がっているという、この作者独特の世界観に由来している。そして彼の作品は、現代の絵画でありながら、ボスやブリューゲル1世のように時代を超えた普遍性を有してもいるのである。
地のいきもの(2020年制作)
F100号 キャンバスにテンペラ
安戸丹生子の誘惑(2019年制作)
P100号 キャンバスにテンペラ
地のいきもの(2019年制作)
F80号 キャンバスにテンペラ
地のいきもの(2019年制作)
F80号 キャンバスにテンペラ
地のいきもの(2019年制作)
F50号 キャンバスにテンペラ
地のいきもの(2019年制作)
F50号 キャンバスにテンペラ
地のいきもの(2018年制作)
F50号 キャンバスにテンペラ
地のいきもの(2018年制作)
F50号 キャンバスにテンペラ
佐藤昌宏
2020年6月23日付朝日新聞
- 【略歴】
- 1954
- 岐阜市に生まれる
- 1980
- 東京藝術大学大学院美術研究科(油画)修了
- 1981
- 千葉県新進作家展 船橋西武美術館(千葉)
- 1982
- グループ「6」展 真和画廊(東京)
- 1982
- 6人展 古典と現在の狭間にて 永井画廊(東京)
- 1983
- 個展 真和画廊(東京)
- 1984
- 浅井忠記念賞展 千葉県美術館
- 1984
- 大橋賞受賞作家展 高島屋(日本橋、難波)
- 1984
- グループ「6」展 Gアートギャラリー(東京)
- 1985
- 浜松私のイメージ展 浜松市美術館
- 1985
- 安井賞展 ※86、87、92、93年
- 1985
- 個展 ギャラリーNAF(名古屋)
- 1986
- セントラル86 セントラル美術館(東京)
- 1986
- 中日展 ※91年 名古屋市博物館
- 1987
- セントラル87 セントラル美術館(東京)
- 1988
- 岐阜県文化活動等特別奨励賞受賞
- 1988
- 個展 ※91年 ラブコレクションギャラリー(愛知)
- 1990
- 幻想の力 宮城県立美術館
- 1990
- 中日展(準大賞受賞) 名古屋市美術館
- 1990
- 伊藤廉記念賞展(記念賞受賞) 名古屋日動画廊
- 1992
- 東海の作家たち展 愛知県芸術文化センター
- 1993
- 絵画の今日展 ※95、97年 三越美術館(東京)
- 1993
- 伊藤廉記念賞展(招待出品)
- 1993
- 中日賞受賞作家展 名古屋市博物館
- 1997
- 二人展 視点97 名古屋市民ギャラリー
- 1998
- 伊豆美術祭絵画公募展 ※00年 伊東市観光会館
- 1999
- 美浜美術展 美浜原子力PRセンター他(福井)
- 2001
- 個展 ※03年 ギャラリー141(名古屋)
- 2002
- 個展 ※04、09、12、14年 ギャラリーパスワールド(岐阜)
- 2003
- 岐阜内モンゴル美術展 内蒙古美術館(内モンゴル自治区)
- 2004
- 個展 北ビワコホテル グラツィエ・ギャラリー(長浜)
- 2004
- COBALT展 岐阜県美術館一般展示室・パスワールド
- 2005
- COBALT展 ※06年 岐阜県美術館一般展示室
- 2005
- 個展 マキイマサルファインアーツ(浅草橋)
- 2006
- 天野裕夫とのコラボレーション ギャラリーパスワールド(岐阜)
- 2007
- 自画像の証言 東京芸術大学美術館 陳列館
- 2008
- 上宮寺アートフォーラム 天野裕夫とのコラボレーション (岐阜市上宮寺)
- 2010
- グループ展 地のいきものF15他 晩翠画廊(仙台)
- 2010
- Art Scene in Gifu ギャラリーパスワールド(岐阜)
- 2010
- ベスパ・プリマベーラと作家たち 極小美術館(池田町)
- 2011
- 第20回 富嶽ビエンナーレ展 静岡県立美術館
- 2011
- 個展 Galerie41 VERNEUIL(Paris)
- 2011
- 新進作家と現代美術家 極小美術館(池田町)
- 2012
- 個展 極小美術館(池田町)
- 2013
- 第3回 青木繁記念大賞西日本美術展 久留米市美術館 石橋正二郎記念館(福岡)
- 2013
- リアリズムの深層 極小美術館(池田町)
- 2015
- 現代の美術作家10人展 岐阜県現代美術館
- 2015
- グループ展 岐阜DNA 岐阜県美術館
- 2016
- 宇宙の連環として2016 極小美術館(池田町)
- 2018
- 第9回 円空大賞展(円空賞受賞) 岐阜県美術館
- 2018
- グループ展 Art Scene in Gifu 2018 ギャラリーパスワールド(岐阜)
- 【パブリックコレクション】
- ■岐阜県美術館 「六道輪廻」(1978年制作) 「地のいきもの」(2017年制作)
- ※開催時点