Contemporary Art
極小美術館
Hanada
Katsutaro
花田
勝太郎
2019.5/12 (sun) 〜 2019.6/30 (sun)
No.29
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料ジャンルを超え、生命の根源へ
2018年12月、中部国展に出品された花田勝太郎の作品は、異彩を放っていた。会場の遠くから見ても一目でそれとわかる独特の作風。そして、近づいて見るならば、エアブラシを使いながらもあえて粗く表現されたディテールに目がいく。空にはもこもことした雲のような物体が連なっており、そこに施された蛍光色のようなピンク色が鮮やかである。地表からは細かなオレンジ色の粒が湧き上るように描かれている。
この絵をあえてひとつのジャンルに当てはめるとしたら、やはり、風景画ということになるのだろう。しかしながら、この絵に接し、しばらく眺めていると、はたしてこれを単純に風景画と捉えてよいのだろうかという疑問が生じてくる。確かに風景画にお決まりの空があり、雲があり、地平線があるようだが、空に連なる雲は単なる雲とは思い難く、内臓やお尻のような形にも見えてくるし、そこにほのかなエロスさえも感じさせる。そして地表に立ち昇るオレンジ色の粒は、霊気のようにも思える雰囲気を持っている。
我々人間は、これまでの歴史の中でこの世に存在する様々なものを分類してきたし、これからも分類し、細分化していくことだろう。それは人間の性のようなものかもしれない。美術も例外ではなく、絵画と彫刻、平面と立体、人物画と風景画と静物画、具象画と抽象画などを始めとして、細かなジャンルに分けられている。しかし、現代の美術作品、芸術作品においてはそれらのジャンルをまたぐ作品や、ジャンル分け自体無意味に思わせるような作品も次々と生まれて来ている。それが現代のひとつの現象ともいえるだろう。
そういったことを考慮するとき、花田の作品は、まさに、ジャンルというものを超えた作品といえるのではないかと考えられる。一見すると雲のある綺麗な風景画のようだが、そこに描かれているのは、もっと根源的な生命の発露、そして生命に内在する神秘的なものである。花田の描く雲は人間の根源にある肉体的なもの、精神的なものを思わせるが、そのためか、この雲の風景は現実にある風景ではなく、どこか非現実的なものに感じられる。地表は単なる地表ではなく、霊気の発露するところであるとすれば、やはり現実を離れている。
このような作風は2011年ごろから始まっているとのことだが、年を経るごとに徐々に変化しているようだ。以前には花のような大きな物体から雲が放射状に広がって描かれる作品もあり、また、雲だけが花びらのように、あるいは放射状に広がる作品も描かれた。そして水平に連なってゆく雲が描かれるようになった。しかし、このような変化を経ても作品の根本的なところは変わっていない。
花田の一枚の作品が多くのジャンルにまたがっており、そのために様々なことを語りかけてくることは興味深い。作品は抽象性を帯びているがゆえに、観る者の想像力を刺激し、単なる風景を見るに留まらない多くの物語やイメージを想起させる。そこには絵画だからこそ表現し得る豊かな世界があるのではないだろうか。
’19-2 Spesimen(2019年制作)
F130号、素材=エアブラシ、アクリル画
’17-7 Spesimen B(2017年制作)
S100号、素材=エアブラシ、アクリル画
花田勝太郎
- 【略歴】
- 1943
- 岐阜県生まれ
- 1967
- 武蔵野美術大学造形学部卒
- 1972
- 国画会46回国展初出品(~現在まで)
- 1973
- 個展(ギャラリーはくぜん・名古屋市)
- 1975
- 49回国展−国賞受賞
- 1975
- 第9回現代日本美術選抜展(文化庁主催)
- 1976
- 50回国展−50周記念賞受賞・国画賞授賞
- 1977
- 第3回東京展(東京都美術館)
- 1977
- 個展(ギャラリーはくぜん・名古屋市)
- 1978
- 第12回日本国際美術展(毎日新聞社主催)
- 1978
- 中部形象展(毎日新聞社主催)
- 1978
- 第1回エンバ美術賞展−U氏賞受賞
- 1979
- 第14回現代日本美術選抜展(毎日新聞社主催)
- 1979
- 第2回エンバ美術賞展−優秀受賞
- 1980
- 個展(銀座スルガ台画廊・東京)
- 1980
- 第13回日本国際美術展(毎日新聞社主催)
- 1980
- 第6回日仏現代美術展
- 1981
- 第4回エンバ美術賞展−優秀賞受賞
- 1982
- 個展(銀座スルガ台画廊・東京)
- 1982
- 56回国展−会友優作賞・サントリー賞受賞
- 1982
- 第16回現代日本美術選抜展(文化庁主催)
- 1982
- 第5回エンバ美術賞展−U氏賞受賞
- 1983
- 岐阜現況展(岐阜県美術館主催)
- 1983
- 個展(アートサロンことぶき・岐阜市)
- 1984
- 岐阜県現代美術家協会展(~92年まで)
- 1984
- 岐阜アンデパンダン20年後展(VAVA主催)
- 1985
- ’85IBM絵画・イラスト・コンクール展(85.87.89年出品、大阪)
- 1985
- 第8回エンバ美術賞展−エンバ賞受賞
- 1986
- 個展(銀座スルガ台画廊・東京)
- 1987
- ’87アートナウ・イン・ナゴヤ(~94年まで、アート・サロン・ダイトーボー)
- 1987
- 第10回エンバ美術賞展−芦屋市市長賞受賞
- 1989
- 個展(エンバ画廊・神戸市)
- 1992
- 現代美術選抜展MAKURAZAKI(枕崎市)
- 1992
- 東海の作家たち(愛知県立美術館主催)
- 1993
- 現代美術の視点(熊本県立美術館分館)
- 1993
- CONTEMPORARY ART FESTIVAL(93.94.97.98.00年出品、埼玉県立美術館)
- 1995
- 個展(ヒガシ画廊・中津川市)
- 1995
- 現代美術の視点(95~00年まで、三井ギャラリー)
- 1996
- アート・フロンティア(96.97.04年、三重県立総合文化会館)
- 1997
- 天理ビエンナーレ立体−大賞受賞
- 1998
- 現代美術作家選抜展(大正ロマン館・明智町)
- 1998
- 西濃60年代展(大垣市企画)
- 1999
- ’99現代美術3人展(画廊沙和企画)
- 1999
- 「郷土の作家たち」展(羽島市企画)
- 1999
- 日中現代美術交流展(中国福建省)
- 2002
- 日中現代美術交流展(ニューヨークアジア美術館)
- 2002
- 個展(銀座スルガ台画廊・東京)
- 2004
- 「選ばれた21の表現」展(駒ヶ根美術館)
- 2004
- 日韓交流展「文化植民地」展(ソウル)
- 2004
- CAFネビュラ展(04.06.09年出品)
- 2005
- 個展(北ビワコホテル・グラツィエギャラリー)
- 2006
- INTERNATIONAL GROUP SHOW II(ニューヨーク)
- 2007
- 国画会の画家たち(メナード美術館)
- 2007
- 作家の視点(はるひ美術館)
- 2008
- 中日国際交流芸術展(北京故宮博物院内太廟大殿)
- 2008
- 飛騨高山現代美術展(高山市)
- 2013
- 個展(極小美術館、池田町)
- 2016
- 宇宙の連環として(極小美術館、池田町)
- 現在
- 国画会会員、日本美術家連名会員
- ※開催時点
(名古屋市美術館・学芸員)