Contemporary Art
極小美術館
Ono
Nobuko
小野
允子
2016.10/9(sun)~ 2016.12/18(sun)
espoir 19
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料素材の向こうにあるもの
昨年、ヴェネチアビエンナーレに行った帰り、トレヴィーソに寄った。ベネトン本社は旧市街の広場の横に、伝統的なこじんまりした建物にあった。
世界に名だたるベネトンが今から十数年前にキャンペーンしたポスターは、衝撃的なデザインだった。
夢を抱かせ、叶えるはずのアパレル会社が、鉄条網に手を掛け、虚ろな目を投げかける少女像など、反戦・反核ポスターそのものを画面全体で表現していた。
自社製品を売る以前に、同時代を生きる者のコンセプトが切実に伝わってきた。
小野允子の今回発表する作品は、陶土で鉄条網を作り、展示会場の壁を一周させるというプランである。その鉄条網の造形は見た目と違い、手のひらで握れば忽ち壊れてしまう素材を敢えて選択していた。
小野は大垣市生まれ。老舗の4姉妹の末っ子で、こよなく芸術を愛する姉、容(よう)さんの影響を強く受けたようだ。東京へ出て武蔵野美術大学で学ぶ時期、学生運動の真只中に巻き込まれ、東大安田講堂で象徴される自由と改革、政治と世界の動向に否応なしに晒されたに違いない。
大学では清水多嘉示教授からアカデミックな基礎造形を叩き込まれ、井上武吉教授からは現代美術のありようを学んだ。同時期、保田春彦、篠田守男、飯田善国、最上寿之など錚々たるアーティストが同大学にいて、数々の刺激を受けながら、卒業後の制作の道を探っていった。
古い体質を引きずる陶芸界にあって、人と群れず、誰にも媚びず、身の丈に合った仕事を半世紀近く続けてきた作家の、今なお衰えない旺盛な制作意欲には頭が下がる。
「現代美術に社会性はあるのか」とか「芸術は社会に役立っているのか」など乱暴、無知な言葉を耳にすることがある。
昨年のヴェネチアビエンナーレで金獅子賞に輝いたアルメニア修道院でのアルメニア人作家たちの受賞を契機に、第一次大戦中のオスマントルコ帝国によるアルメニア人の殺害行為(ジェノサイド)が起きたことを我々は改めて知った。
未だにこの事実を認めようとしないトルコ政府に対し、微妙な政治の力関係で声を出せない諸外国や主要メディアが存在するのが現実なのだ。
ヴェネチアビエンナーレの展覧会に200万人を超える鑑賞者が訪れた。それぞれがそのメッセージを自国に持ち帰り、真実を直視する契機になっている。
現代美術が何ものにも束縛されない自由な表現と、精神の解放と冒険を持ち続ける意義がここにある。
今回の小野允子展はそんなささやかな一石を投げかける展覧会といえるのではないか。
Desert Ⅱ
W650 × D250 × H620㎜
Desert Ⅲ
W600 × D250 × H730㎜
小野允子
- 【略歴】
- 1947
- 岐阜県大垣市に生まれる
- 1970
- 武蔵野美術大学造形学部彫刻科 卒業
- 1979
- 中日国際陶芸展(オリエンタル中村栄本店・名古屋三越栄本店 / 名古屋)
- 1979
- 朝日陶芸展(名古屋丸栄スカイル)※ 岡山、東京、長野、滋賀で巡回展
- 1979
- 八木一夫賞現代陶芸展(東京新宿伊勢丹美術館 等)
- 1989
- 第1回陶芸ビエンナーレ(名古屋三越百貨店)※ 金沢、岡山、東京で巡回展
- 1989
- 工芸都市’89クラフト展(高岡)
- 1990
- 使ってみたい北の菓子器展で佳作賞(札幌)
- 1991
- 日本陶芸展(東京大丸ミュージアム)※ 大阪、仙台、山形、松江、水戸、宇都宮、新潟、九州で巡回展
- 1992
- 国際陶磁器展実美濃(多治見市特別展覧会場)
- 1993
- 陶芸ビエンナーレ(名古屋三越栄本店)※ 岡山、金沢で巡回展
- 1995
- 陶芸ビエンナーレ(名古屋三越栄本店)※ 岡山、金沢で巡回展
- 1996
- 東海の現代陶芸展(名古屋国際会議場)
- 1996
- デンマーク ボーンホルム島スワニケにて作陶、二人展
- 1997
- デンマーク コペンハーゲン国立ガメルドックにて作陶
- 1998
- 第1回個展(ギャラリー ノビュー / コペンハーゲン)
- 1998
- 日本現代陶彫展・マケット展で土岐市長賞(セラテクノ土岐)
- 1999
- 陶芸ビエンナーレ(名古屋三越本店)
- 2002
- 第3回ユーモア陶彫展(セラトピア土岐ギャラリー)
- 2006
- 第4回ユーモア陶彫展(セラトピア土岐ギャラリー)
- 2016
- 第2回個展(極小美術館 / 岐阜)
- ※開催時点