Contemporary Art

極小美術館

2012.11/18(sun)~ 2013.3/10(fri)

espoir 06

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

鉛筆画の世界 -空気の揺らぎ-

河西栄二 (彫刻家、新制作協会会員、岐阜大学教育学部准教授)

 山内寿美の作品を久しぶりに見たのは、2011年9月に極小美術館で開催された「池田山麓現代美術展2011 新進作家と現代美術家」においてであった。15名の新進作家の一人として選抜された彼女の作品は、具象作家4名の作品を集めた3Fの展示室に並べられていた。2点の作品はどちらも、長身の女性が静かに立つ姿が鉛筆で描き込まれていた。鉛筆の重なりによる線の密度が心地よく、人物を通した自身の心情、その周辺の情景や空気の揺らぎをも捉えているように感じられた。
 山内は、岐阜県立加納高校美術科、筑波大学芸術専門学群洋画コースにおいて絵画制作に取り組む。
 山内と私は、筑波大学洋画コースの同級生であるが、学生時代の彼女の作品は強く印象に残っている。シャープな稜線によるエッジの効いた面で構成され、ブルーを多用した画面には透明感があった。
 卒業後は郷里の岐阜県に戻り、社会人、そして女性特有の役割が増える中、制作の休止期間を経て、鉛筆のみのモノトーンの制作にたどり着いたという。制約のある技法や表現は、深みのある個性的な表現に繋がることがままある。彼女もまた新たな表現への転換期を迎えているといえよう。
 彼女のポートフォーリオには、次のような文章が記されている。
 「学生の頃は、すべての時間を絵を描くことに費やした。社会人になり、自身に様々な役割が増えるに伴い、無理に作った時間の中での制作に息切れした。しかし、常に制作への渇望があったように思う。
 現在、自分の時間も少し持てるようになって、鉛筆による作品に取り組んでいる。色彩による深層心理表現を卒業論文のテーマにしたほど「色」にこだわりのあった自分が、である。
 あえて鉛筆のみの作品を描いているのは、そのストイックな感じがとても心地よい自分がいるからだ。
今こうして振り返ってみると、学生時代より肩の力が抜けて、等身大の自分が表現できるようになった気がする。」
 制作と生活を両立させることは、言葉でいう以上に大変なことである。様々な立場や経験が作品として結実していく。今後の山内の活動が楽しみである。

dress
92 × 162cm 鉛筆・紙・布(2012年制作)

angella

coat

oni-azami

eyewear (部分)

山内寿美

【略歴】
1966
岐阜県生まれ
1985
岐阜県立加納高等学校美術科卒業
1986
4人展 筑波大学 大学会館ホール(つくば市)
1989
筑波大学芸術専門学群 洋画コース卒業
【個展・グループ展】
1989
個展 ギャラリー鮎(岐阜市)
2011
極小美術館企画展 池田山麓現代美術展2011 宇宙の連環として「新進作家と現代美術家」出品
※開催時点