Contemporary Art

極小美術館

2013.3/24(sun)~ 2013.5/31(fri)

espoir 07

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

渡邊智子の三次元空間に於ける
絵画空間について 

篠田守男 (彫刻家・筑波大学名誉教授)

 私が最初に渡邊智子の作品にふれたのは沖縄県立芸術大学第19回卒業作品展に出品された平面43枚による絵画空間と題する平面のインスタレーション作品であった。この作品はその大学の買い上げ賞を受賞している。その後、それら様々の平面作品を天井から吊り下げた物理的三次元空間にインスタレーションを展開している。
 私が特に注目したのは作家が物理的三次元空間を持ちながら、あくまでも絵画表現として二次元空間に軸足を置いている点である。
 絵画と立体作品の概念的違いは夫々が二次元的または二次元的エネルギーを持ち得ているか否かに関わっている。例えば球体に色を塗っても平面的(球面)エネルギーといわざるを得ない。フランク・ステラが1960年代にシェイプド・キャンバスと指名して平面作品を発表したのもここに意味を見いだすことができる。
 渡邊は更に2011年池田山麓現代美術展では正にシェイプド・キャンバスの作品を発表して新進作家賞を受賞している。ステラに待つまでもなく、本来わが国では複層立ての屏風等にみられるごとく、三次元的平面絵画がごく普通に表現されていたのである。
 渡邊のこの作品は会場の凸コーナーにまたがるように展示することによって会場そのものの立体空間すらも平面エネルギーに変貌させていたことは作家の絵画表現への執着が強く現れたものとみることができる。
 2012年極小美術館に出品された立体7点による絵画空間「いろはにほへと」や、岐阜金華山、岩戸八幡神社の発表では三次元的要素をより強く表面に出すことによって更に絵画性が強調されるという不思議な、かつてなかった新鮮な絵画表現となっている。
今後この作家は絵画表現を概念の中心に据え、インスタレーションという手法を用いて、周辺の環境をも含めて、作家の絵画表現のなかに包含していけるかが課題であろう。

いろはにほへと
ミクストメディア(2012年制作)

(2011年制作)

(2012年制作)

渡邊智子

【略歴】
1983
岐阜市生まれ
2002
岐阜県立加納高等学校 美術科卒業
2004
沖縄県立芸術大学 美術工芸学部美術科絵画専攻 入学
2007
第1回個展(沖縄県立芸術大学付属図書館・芸術資料館)
2008
沖縄県立芸術大学 卒業
2008
沖縄芸術大学第19回卒業作品展買い上げ賞受賞
2011
等身対談展(愛知県立芸術文化センター・アートスペース)
2011
合津・漆の芸術祭2011「東北へのエール」に参加
2011
池田山麓現代美術展2011「宇宙の連環として」(極小美術館・岐阜) 新進作家賞受賞
2012
現代美術の新世代展2012(極小美術館・岐阜)
2013
第2回個展(極小美術館・岐阜「エスポアール」)
2013
第4回中之条ビエンナーレ(群馬県)