Contemporary Art
極小美術館
Takenaka
Miyuki
竹中
美幸
2012.3/18(sun)~ 2012.6/10(sun)
espoir 04
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料しなやかに挑戦し続ける
竹中美幸を知ったのはトーキョーワンダーウォール2010で受賞したのを新聞報道で読んだのがきっかけだった。何度か本人と遣り取りをした後、分厚いポートフォーリオが送られてきた。
溢れるような色彩の作品群とともに作家歴が同封されていたが、それを見て驚いた。年に数回の個展開催は言うに及ばず、ありとあらゆる企画展、グループ展などに発表し続け、それは爆発的ともいえるエネルギーと映った。
岐阜県大垣市出身の竹中は名門の県立加納高校美術科を卒業した後、浪人生活を経て多摩美術大学大学院を修了した。
学生ではなくなった若い作家にとって、大都会東京で生活し、作家活動を続ける困難さは計り知れない。派遣やパート、アルバイトをしながらの、今にも押し潰されそうになる状況の中で、彼女は自分が作家であると自問自答しながら作品を発表し続けたに違いない。
手当たり次第の発表という表現が的確でないかもしれないが、そこに確かな生き方を見つけることができる。
竹中の仕事の特徴は宝石箱から飛び出したような色彩の躍動感がある。先日、岡崎市美術博物館で村山槐多展を見たが、彼の絵を支配しているものは独特のフォルムであり、凄みのある描線が基軸になっている。数ある作品群の中で唯一、石膏デッサンが展示されていたが、へたくそでおかしかった。要するに西洋式リアリズムの基礎なんていうものは何の役に立つものではなく、村山槐多の感性と官能の素描力が我々の心を打つのだろう。槐多にとって彩色とは形があってのプロセスだった。
竹中の仕事は学部を卒業する前後から、色彩が「かたち」から解放されて色が弾けるようになる。ポロックのドロッピングのような偶然性に頼らない綿密なプログラムの積み重ねで制作を続ける。さらに、新素材アクリルとの出会いが新しい境地を開き始めた。
彫刻家と違って画家がテクスチャーを変えたり、マテリアルに挑戦するのは大変勇気のいることだが、ごく自然に展開しつつある。
旺盛な知的好奇心と、溢れるようなバイタリティーが彼女を支えていると言える。
あくまでもしなやかに、したたかに竹中アートは進化していく。
冬の出口
1240 × 1240㎜(2011年制作)
瞼の漂流物 500 × 500㎜
懐かしい光景
178 × 178 × 84㎜ (2010年制作)
竹中美幸
- 【略歴】
- 1976
- 岐阜県生まれ
- 1997
- 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻入学
- 1903
- 同大学大学院美術研究科博士前期(修士)課程絵画専攻修了
- 【受賞歴】
- 2000
- ノキアアートアワードアジアパシフィック2000 日本第5位
- 2001
- ノキアアートアワードアジアパシフィック2000 アジア第3位
- 2003
- TAMA・デ・アート2003 パルテノン多摩賞
- 2010
- トーキョーワンダーウォール2010 ワンダーウォール賞
- 2011
- 第4回アーティクル賞 準グランプリ
- 2011
- 第6回タグボートアワード リキテックス賞
- 【個展】
- 2002
- galleria grafica bis(東京)
- 2004
- トーキョーワンダーサイト本郷(東京)
- 2005
- 金鳳堂ギャラリー(東京)
- 2008
- コートギャラリー国立(東京)
- 2009
- ギャラリートリニティ(東京)
- 2009
- アートフロントギャラリー(東京)
- 2009
- 帝国ホテルアーケード 絵画堂(東京)
- 2010
- ギャラリートリニティ(東京)
- 2011
- トーキョーワンダーウォール都庁2010 (東京)
- 2011
- 新宿眼科画廊(東京)
- 2011
- コートギャラリー国立(東京)
- 2011
- ギャラリートリニティ(東京)
- 【グループ展など】
- 2001
- トーキョーワンダーウォール2001 東京都現代美術館(東京)
- 2001
- 新生展(東京)
- 2001
- 群馬青年ビエンナーレ01 群馬県立美術館(群馬)
- 2002
- フィリップモリスK.K.アートアワード2002 東京国際フォーラム(東京)
- 2002
- トーキョーワンダーウォール2002 東京都現代美術館(東京)
- 2004
- トーキョーワンダーウォールの作家たち展2000-2003 東京都現代美術館(東京)
- 2004
- つくられる平面Vol.4(遠藤竜太 山本晶 松井清 竹中美幸) コートギャラリー国立(東京)
- 2005
- Aランチ -私は作品をメニューからチョイスする- AXIS GALLERY ANEX(東京)
- 2006
- アミューズアートジャムin京都 京都文化博物館(京都)
- 2009
- YOUNG ART TAIPEI(台湾)
- 2009
- Asia Top Gallery Hotel Art Fair(韓国)
- 2009
- quiet power of tokyo(米・ヒューストン)
- 2010
- 和の華やぎ展 アートフロントギャラリー(東京)
- 2010
- Asia Top Gallery Hotel Art Fair hong kong(香港)
- 2010
- kunstart10 Italia bolzano(伊)
- 2010
- kawaii賞 西武渋谷(東京)
- 2010
- 梅雨の晴れ間に展 アートフロントギャラリー(東京)
- 2010
- 新生展(東京)
- 2010
- アート亀山2010(三重)
- 2010
- エマージングアートディレクターズフェアULTRA003 SPIRAL(東京)
- 2011
- 新緑と共に絵画散歩 アートフロントギャラリー(東京)
- 2011
- inside the garden 原田郁-竹中美幸 展 アートフロントギャラリー(東京)
- 2011
- 池田山麓現代美術展2011 宇宙の連環として 極小美術館(岐阜)
- 2012
- VOCA展2012 ‐新しい平面の作家たち‐ 上野の森美術館(東京)
- ※開催時点
竹中美幸の出会いは2002年の「代官山猿楽祭」の前身の「代官山アートフェア」までさかのぼる。あるベテランのギャラリストが一押し作家として連れてきたのが竹中さんだった。水彩のドローイングとまだ当時始まったばかりの樹脂。今から考えればまだ手法も稚拙だったかも知れないが、方向性はそのころから一貫しており、その手法が熟達して10年後にはVOCA展に出展するようになった。この間、作品としてクオリティが高まるだけでなく、他にもアートフロントの展覧会では樹脂を立体化しようとしてみたり、ドローイングと樹脂を同一の画面で表現してみたり新たな表現を目指した試みも続けてきた。
ところが、2013年になって竹中は突如35㎜フイルムをギャラリーに持ち込み、その試作品を私たちの前に並べ始めた。私たちもこの作家がフイルム現像の仕事を以していたことを思いだし、この10年来の試行錯誤の結果、ようやくアートして結実した作品を初めて目の当たりにした。それはフイルムに恣意的に光を露光することで色を与え、それを複数の層として重ねることで見えないはずの光、あるいは光によって初めて見えるようになるはずの何かをフイルムという物体を通して可視化する作品群である。
竹中美幸とはどんな作家だろうか。ドローイングでは目を強く閉じ、光の残像を応用して出てくる種子のような物体を描く事、樹脂のシリーズでは透明樹脂の光の陰影によって見えないものをそこに見えるようにすることであった。これまで2極化していた表現に第3の表現が加わることにより、この作家がこれまで種子だとか樹脂だとかというレベルでしか捉えていなかったことに気づかされた。むしろ視覚が像を結び、それが何であるかということを認識する以前の曖昧であり続ける像を表現しようとする作家なのかもしれない。
10年を経てようやく生まれたフイルムを使った新たな作品群を見ながら、この曖昧な像という現象を、確固たる「もの」としての作品を探し続ける、アーティストの意志が表明される展覧会になると感じている。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
「光/闇」(部分) 35mmフィルム、アルミ板、他
130×226cm(2015年)
【 竹中 美幸 ホームページ 】