Contemporary Art

極小美術館

2011.2/8(sat)~ 2011.3/31(thu)

No.03

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

ポスターにおける具象から具体へ-
Message from animals 2010

松浦昇(金沢大学教授)

 ポスターをデザインかアートか、と区別して語るのはおかしい。ポスターはアートであり、メッセージである。ポスター表現で重要なのは、見る人に連想させ、気づかせ、考えさせることである。現代のポスターは、ロートレックから進化しているのに理解されていない。ロートレックは自己表現のひとつとして捉えているのに、日本のデザイナーの中には、その考えを拒否するものがいる。もっとポスター芸術に誇りを持つべきである。現代の浮世絵として、また、グローバルな視覚言語として、現在、世界の20数都市で国際的なコンクールや展覧会が開催されているが、ポスターはアートであり、今日の現代美術の一分野を形成していることは明白な事実である。

 加藤のポスターは海外で高い評価を得ているが、彼の作風はシルクスクリーン技法と切り離せない。彼はシルクスクリーン技法の特色である、色数を抑え、簡潔な形態によるイメージの形象化に成功している。その成功の裏には、岐阜県という地域性、つまり、シルクスクリーン印刷の先駆的地域であった事実が関係している。加藤のポスターは、岐阜で育まれた表現となったのである。
 1998年第16回ワルシャワ国際ポスタービエンナーレのコマーシャル部門で銀賞を受賞した。その頃から加藤の作風が変わっていく。それまでは対象となる形態やシンボルを、丁寧に具象化に突き詰め、テーマに即して独自の解釈をしていたが、それ以降は対象となる形態やシンボルを、色に拘りながら、自然体に、しかも具体的に、見る人に受け入れやすい抽象化をめざしている。彼は社会派ではないが、彼の熱いメッセージはユーモアを込めて弱者に注がれ、気負うところがなく、表現を楽しんでいる。

加藤由朗(仕事場で)

【略歴】
1948
岐阜市生まれ
1967
岐阜県立岐阜北高校卒業
1971
愛知県立芸術大学美術学部デザイン専攻卒業カナダ遊学を経て、東京の広告制作会社で仕事を続ける
1975
朝日広告賞入選・表現技術賞
(朝日新聞社/東京)
1980
第3回NAAC展奨励賞
(日本広告技術評議会/東京)
1981
第4回ラハチポスタービエンナーレ佳作賞(フィンランド)
1987
コロラド国際招待ポスター展(コロラド州立大学/USA)※1993年まで毎年招待出品
1987
第7回ラハチポスタービエンナーレ佳作賞(フィンランド)
1988
ハンガリー国際招待ポスター展
(ペシスギャラリー/ハンガリー)
※2000年まで毎年招待出品
1993
日本のポスター1978-1993
(チューリッヒ造形美術館/スイス)
1994
日本のポスター展
(ポスナン国立美術館/ポーランド)
1994
Japanese Posters of the Eighties(フェアリー・ディクソン大学/USA)
1998
ワルシャワポスタービエンナーレ銀賞(ポーランド)
2009
テヘラン国際ポスタービエンナーレ2009審査委員賞(イラン)
現在
愛知産業大学教授  Yu-Graphic主宰
【個展】
1979
加藤由朗ポスター展(ギャラリー・あい/名古屋)
2001
個展「A little love」(自由空間/岐阜)
2004
個展「ちいさいぼくたち」(北ビワコホテル・グラツィエギャラリー/滋賀)
2006
加藤由朗ポスター展(新丘大学/韓国)
【グループ展等(抜粋)】
1985
第1回世界ポスタートリエンナーレトヤマ(富山県立近代美術館/日本)
1986
第11回ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ(ポーランド)
1990
第14回ブルノ国際グラフィックビエンナーレ(チェコスロバキア)
1990
第1回メキシコ国際ポスター展(メキシコ)
1992
第3回ショーモン国際ポスターフェスティバル(フランス)
1997
第5回世界ポスタートリエンナーレトヤマ(富山県立近代美術館/日本)
1999
第12回ラハチポスタービエンナーレ
2000
第19回ブルノ国際グラフィックビエンナーレ(チェコ共和国)
2001
第2回ニンボー国際ポスター交流展(中国)
2003
第19回ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ
2005
第15回ラハチポスタービエンナーレ
2007
第5回劇場ポスタートリエンナーレ・ソフィア(ブルガリア)
2008
モスクワ国際グラフィックビエンナーレ Golden Bee 8(ロシア)
2010
第2回シカゴ国際ポスタービエンナーレ(USA)
【パブリックコレクション】
■ハンブルグ美術工芸博物館(ドイツ)
■チューリッヒ造形美術館(スイス)
■コロラド州立大学(USA)
■ポスナン国立美術館(ポーランド)
■パリ広告博物館(フランス)
※開催時点

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