Contemporary Art
極小美術館
Yamamoto
Shinichi
山本
真一
2022.3/6(sun)~ 2022.4/10(sun)
No.39
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料山本真一展に寄せて
白と黒の短いタッチの重なりから(高山祭の)屋台と人の姿が立ち上がってくる。強い光線の中で揺れ動くシルエットを画面に捉えたかのようだ。現実に即しながら幻にも見える、光と影の世界である ――
これは2014年11月、山本真一さんの《艶》(2011年作)の解説文の一部である。同年10月から12月にかけて、岐阜県美術館の企画展「今をいろどる~現代日本画の世界」を実施した際に執筆したものだ。同展は、美術館が所蔵する1950年代以降の日本画に、活躍中の日本画家の近作を組みあわせるというコンセプトで、4人の作家に出品を依頼した。山本さんはそのうちの一人で、日本画の団体として最も長い歴史をもつ日本美術院に所属して堅実な作風を展開する作家である。幸い快諾をいただき、展覧会には冒頭の《艶》に《しとやか》(2004年作)、そして新作の水墨画《長良川礼讃》が展示された。いずれも墨を表現の要とし、身近な情景を題材に、その場所に生きる人びとが抱える過去から現在までの時間を積み重ねるように、細かく筆致を連ねて画面に捉えていく作品だった。特に新作《長良川礼讃》では、岐阜の風景に寄せる暖かなまなざしが画面の隅々まで感じられ、心惹かれて岐阜県美術館で収蔵したいと考えたのだが、残念ながら諸般の事情により叶わなかった。雪がちらつく西濃で、作品をすべて返却し空になったトラックを、展覧会が無事終了した安心感と同時に悄然として見送ったのを、昨日の事のように鮮明に思い出す。
山本真一さんは1967年生まれで、私とほぼ同世代である。日本美術院特待として院展に作品を発表する傍ら、岐阜市の加藤栄三・東一記念美術館の館長としても精力的に業務を推進されている。顔を合わせる機会があるたび、美術館活動や美術の動向について忌憚ない意見を聞かせていただくのだが、共感することが多い。墨に対する深い関心もその一つだ。墨の表現の追求は、山本さんの長年のテーマである。2006年には雪舟の生まれ故郷である岡山県総社市の墨彩画公募展で雪舟大賞を受賞している。
日本画特有の画材である岩絵具や膠は、現代の日常生活からは遠いものであり、実際の画材に触れる機会は少ない。しかし墨は、書初め等で幼児から年配までなじみ深く、最も身近な素材である。その墨をテーマとしてストイックに自らの絵画表現を突き詰める山本さんの活動は、日本画を日常に取り戻そうとする切実な思いに裏付けられているのではないだろうか。
今回の極小美術館の個展でも、水墨による新作が発表されるとうかがっている。7年前の冬から時を経て、その墨の表現がどこまで深化しているのか、見る日が楽しみである。
神気(2021年)
紙本彩色 150号(175 × 220cm)
流(2021年)
紙本彩色 40号(100 × 100cm)
無常(2021年)
紙本彩色 30号(65.2 × 91cm)
願い〈清流礼讃〉(2021年)
紙本彩色 150号(175 × 220cm)
艶(2011年)
紙本彩色 100号(100 × 100cm)
山本真一
- 【略歴】
- 1967
- 愛知県名古屋市に生まれる
- 1988
- 愛知県立芸術大学 美術学部日本画科 入学
- 1992
- 愛知県立芸術大学 美術学部日本画科 卒業
- 1992
- 愛知県立芸術大学 美術研究科大学院 入学
- 1993
- 第78回再興 院展 初入選
- 1994
- 愛知県立芸術大学 美術研究科 大学院日本画専攻修了 修了制作「双」が愛知芸大芸術資料館買上
- 1994
- 第5回 臥龍桜日本画大賞展 奨励賞
- 1995
- 国宝西大寺十二天《水天》模写事業に従事
- 1995
- 日本美術院 院友推挙
- 1996
- 第51回 春の院展 初入選
- 1996
- 愛知県立芸術大学 非常勤講師 ※~01年3月
- 1997
- 葵会日本画展 (東武池袋)
- 1998
- 美の予感 (高島屋/東京/横浜/京都/大阪)
- 2000
- 岩絵具の可能性を求めて (古川美術館・名古屋)
- 2001
- 名古屋城本丸御殿 復元模写事業従事 ※02年
- 2001
- 新世紀をひらく美 (高島屋/東京/横浜/京都/大阪)
- 2002
- 淡墨桜絵画コンクール 優秀賞 (宮村村民会館)
- 2002
- 岐阜現代の美術2002 (岐阜県美術館)
- 2002
- 樫の会日本画展 (一宮市三岸節子記念美術館・愛知)
- 2003
- 山本真一日本画展 (松坂屋/名古屋本店/東京銀座店)
- 2004
- 前田青邨記念大賞展 奨励賞 (東美濃ふれあいセンター・岐阜)
- 2005
- てんびんの里日本画コンクール 優秀賞教育長賞 (近江商人博物館・滋賀)
- 2006
- 雪舟の里総社 墨彩画2006 雪舟大賞 (サンロード吉備路・岡山)
- 2007
- 山本真一日本画展 (北ビワコホテルGRAZIE・滋賀)
- 2007
- 万葉日本画大賞展 (奈良万葉文化館・奈良)
- 2009
- 山本真一日本画展 (ギャラリー光玄・名古屋)
- 2009
- 加藤栄三・東一記念美術館 学芸嘱託員
- 2012
- 岐阜市芸術文化奨励賞 受賞
- 2014
- 日本美術院 特待推挙
- 2015
- 岐阜市長特別表彰
- 2018
- 加藤栄三・東一記念美術館 館長に着任 ※現在に至る
- 現在
- 日本美術院 特待
- ※開催時点