Contemporary Art
極小美術館
Sakamoto
Yui
阪本
結
2021.8/29(sun)~ 2021.10/3(sun)
espoir 34
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料逍遙する絵画 阪本結の画に遊ぶ
“その山水を観るごとに、心神恍惚としてその間に身を置くがごとし”
京都市立芸術大学で日本美術史を講じている私と阪本結の最初の接点は、当然のことながら日本美術史の講義の中だった。過去のメールの検索をしたところ2009年、日本絵画史のレポートが残っていることに気付いた。5月4日に届いたメールには岩倉の実相院の特別公開に行ってきましたという写真が添えられていた。阪本が3回生のことである。
ただその後、学内での展示や毎年の作品展(2月に全学年全専攻の学生が成果発表する展覧会)でも作品はずっと見ていたはずだが、日本美術を主領域とする私の印象にはあまり残っていなかったというのが正直なところだ。卒業制作は人物を描いた組作品だった。
はっきり作家として注目するようになったのは蓮華荘のメンバーとして作品展示をした頃からだった。蓮華荘とは京都市立芸術大学卒業の若い作家が共同アトリエとして利用していた京都市山科区の古い木造家屋である。唐仁原希、松本和子ら当時から注目度の高い作家が在籍しており、トキワ荘を想起させる熱気があった。2013年のオープンスタジオで出会った阪本の絵は未だ混沌としつつも勢いを感じるものだった。そこから注目して作品を見るようになり、画面にさまざまな要素を取り込んでつなぎ合わせた風景が私の心をとらえた。
中国や日本の山水画は多くの場合、複数の視点からの地形が組み合わされている。しかも自然だけでなく、山中の草庵やそこに至る小径が配されて見る者が画中の人となって逍遙することを誘っている。私にとって阪本の絵の中に感じた魅力もまさにそこにある。多視点の風景が単に組み合わされただけなら、単なるコラージュだが(実際阪本は制作の過程で写真のコラージュを利用するという)、それらを躍動する線の集積として一つの絵画世界にまとめてあげている。ゆえに山水画たり得る。大学院に戻って描いた修了制作はまさにその境地を確立したものだった。
冒頭に掲げた一句は江戸時代の画人伝『画乗要略』の中で著者白井華陽が与謝蕪村を評した言葉である。蕪村の山水を観るたびに心がうっとりして絵の中の人になったような気がするという。身近な界隈を別世界に変換してみせる阪本結もまた、現代において絵に遊ぶ楽しみを伝えてくれる描き手である。ぜひ注目して見てほしい。
Landscapes〈久世〉(2020年)
キャンバスにアクリル、油彩、パステル、色鉛筆
167cm × 178cm
雪の沓掛(194cm × 411cm)
雪の沓掛(194cm × 411cm)
雪の沓掛(194cm × 411cm)
雪の沓掛(2021年)
キャンバスにアクリル、油彩、パステル、色鉛筆
194cm × 411cm(3枚組)
Garage(2020年)
キャンバスにテンペラ、油彩、ピグメント
10.5mm × 13.8mm
道路(2020年)
キャンバスにテンペラ、油彩、ピグメント
27.3cm × 27.3cm
Ladscapes #1,#2(2016〜2018年)
キャンバスにテンペラ、油彩、ピグメント
194cm × 1134cm(7枚組)
阪本結
- 【略歴】
- 2018
- 京都市立芸術大学大学院 美術研究科絵画専攻油画 修了
- 【個展】
- 2014
- hide-and-seek (KUNST ARZT・京都)
- 2016
- 境界線について (同時代ギャラリー・京都)
- 2021
- 地元のサンプリング (長亭ギャラリー・東京)
- 【おもなグループ展】
- 2014
- RENGE SHOW (MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w・京都)
- 2019
- Kyoto Art for Tomorrow 2019 ―京都府新鋭選抜展― (京都)
- 2020
- ファン・デ・ナゴヤ2020 ここにあるということ (市民ギャラリー矢田・愛知)
- 2020
- Kyoto art for tomorrow 京都文化博物館 (京都)
- 2021
- 企画展・若手の抽象絵画 (BnA_WALL、CITAN、長亭GALLERY・東京)
- 2021
- 現代美術の作法 (極小美術館・岐阜)
- 【おもな受賞歴】
- 2015
- 2015京展 館長奨励賞
- 2018
- 京都市立芸術大学作品展 大学院市長賞
- 2019
- フィレンツェ賞展 佳作
- 2019
- アートハウスおやべ 現代造形展 入選
- 2021
- アートハウスおやべ 現代造形展 特別賞
- 2021
- はるひ絵画トリエンナーレ2021 入選
- 【パブリックコレクション】
- ■京都市立芸術大学芸術資料館
- ※開催時点