Contemporary Art

極小美術館

2017.7/2 (sun) 〜 2017.9/3 (sun)

No.24

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

朽ちてゆく記憶としてのモニュメント

高北幸矢(清須市はるひ美術館館長)

 1996年、大垣市にソフトピアジャパンが造られた。岐阜県がIT関連企業の集積や優れた情報基盤を活かして、地域産業の高度化を担う。公益財団法人ソフトピアジャパンによって運営され、総面積12.7ヘクタール、170社以上のIT関連企業が集結しIT関連技術者2,000人超が働いている。全国に先駆けて情報科学芸術大学院大学(IAMAS)が開講され、日本中からITクリエーターを目指す若者たちが集まった。建築は株式会社黒川紀章都市設計事務所によるもので、IT未来感を象徴したようにシャープである。
 その強い存在感を背景にして、服部八美制作のモニュメントがある。数メートルはあろうかと思える円柱は、主に古煉瓦や古瓦で積み上げられ造られている。ところどころに挟まっている異物はパイプ管であったり電気器具であったり、ソフトピアジャパンの建築工事中で出た残骸である。スマートな建築からは冤罪として否定される代物だ。最上部は更に煉瓦が積み上げられて天に向かうように見えるが、朽ちて荒廃して来ているようでもある。そうした曖昧なまま放置されたかのようである。近代遺跡のようなモニュメントの姿はIT科学の進化に抗って黙っている。20年が過ぎても汚損を全く寄せつけようとしないソフトピアジャパンの建築に抵抗し、欠いているものを訴え続けることがこのモニュメントの宿命のようだ。
 服部八美は賑やかな人の集まりの中に居て、賑やかさに埋もれず孤高である。共に飲む酒はいつも楽しいが、自らを見失うことはない。彼の造った多くのモニュメントがそうであるように、人との関わりを強いてくることはない。そこに創作の魂を感じることができる。服部は、自らを彫刻家と言わずモニュメント制作者と呼ぶ。彫刻とモニュメント、美の永遠を理想として主に大理石やブロンズで造られてきた彫刻に対して、モニュメントはそうした絶対的な個の存在ではない。モニュメントが造られるべき契機は社会にあって、それに対してどう共存するか、あるいは対峙するか。ソフトピアジャパンを訪れた人のモニュメントに対しての評価は、否定肯定のどちらかに大きく分かれる。それこそ服部の望むことに違いない。やがて朽ちていく記憶なのだから。
 極小美術館は、美術のあり方にもの申す美術館のモニュメントである。取り込まれた服部の仕事は、美術館と響き合うことができるのか、それとも腸を喰いちぎる寄生虫となるのか。

常立御柱「龍宮底神」
モニュメント(1996年制作・大垣市ソフトピアジャパン)

産巣日

御天地又結ビ

服部八美

【略歴】
1959
岐阜市に生まれる
1982
名古屋芸術大学彫刻科卒
1982
個展(古陶館・岐阜市)
1988
日本現代陶彫展’88 優秀賞(土岐市)
1990
第4回現代具象彫刻展(千葉県美術館)
1990
日本現代陶彫展’90(土岐市)
1990
FROM OUR HEARTS(岐阜県美術館)
1991
半田市野外彫刻展(半田市)
1992
第5回現代具象彫刻展(千葉県美術館)
1992
第2回ストーンミュージアム石彫展(香川県ストーンミュージアム) ※~2010年
1992
日本現代陶彫展’92 優秀賞(土岐市)
1993
ストリートギャラリー彫刻展示(名古屋広小路)
1993
ART FROM ECOWORLD彫刻展(岐阜県美術館、白川町)
1994
ART FROM ECOWORLD彫刻展(岐阜県揖斐郡、大野町)
1994
’94街はアートで溢れる(愛知県一宮市) ※95、96年
1995
’95 びわこ現代造形展(滋賀県大津市)
1996
ソフトピアジャパンモニュメント設置事業(大垣市)
1996
花フェスタ記念公園彫刻展(可児市)
1997
個展(織部亭・愛知県一宮市)
1998
日本現代陶彫展’98(土岐市)
1998
’98 公募 第11回全国和紙画展 佳作(美濃市)
1998
第13回国民文化祭おおいた98「アジア彫刻・陶芸の祭典」 朝地町賞(愛の園生 朝倉文夫記念公園・大分県)
1999
第2回ユーモア陶彫展’99 優秀賞(土岐市)
2000
日本現代陶彫展2000(土岐市)
2006
個展(ギャラリーパスワールド・岐阜市)
2006
ユーモア陶彫展(土岐市)
2008
飛騨高山現代美術展2008(高山市)
2009
アートを愉しむ小品展(ギャラリーパスワールド・岐阜市)
2009
思い出の石彫展(香川県ストーンミュージアム)
2010
Art Scene in Gifu 2010 − 絵画・彫刻 −(ギャラリーパスワールド・岐阜市)
2011
中之条ビエンナーレ(群馬県中之条町)
2012
“瀬戸の都・高松”石彫トリエンナーレ2012(香川県高松市)
2012
池田山麓現代美術展2012「象の檻」(極小美術館・岐阜県)
2013
中之条ビエンナーレ(群馬県中之条町)
2015
中之条ビエンナーレ(群馬県中之条町)
【コレクション】
■土岐市立泉中学校(土岐市)
■セラミックレインボーロード ポケットパーク(土岐市)
■まどか幼稚園(岐阜市)
■美濃白川クオーレの里(加茂郡白川町)
■温水プール ゆーみんぐ(揖斐郡大野町)
■ソフトピア・ジャパン センター(大垣市)
■愛の園生 朝倉文夫記念公園(大分県朝地町)
■せせらぎ公園(土岐市)
■岐阜県立不破高等学校(不破郡)
■清翔高等学校(岐阜市・岐阜南高等学校)
■東海環状自動車道土岐多治見IC(土岐市)
■花フェスタ記念公園(可児市)
※開催時点