Contemporary Art

極小美術館

2014.10/12(sun)~ 2014.12/14(sun)

No.15

観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料

角度とFLOWが導く先にあるものは

青木正弘(美術評論家、前豊田市美術館副館長)

 石彫と言えば、普通は彫る作業をイメージさせるが、清水朋文の石の作品からは、彫るより、切る、削る、さらには硬い黒御影石の表面を愛でるように丹念に磨く作業の跡が伝わってくる。
 彼の作品を観ていて、二つの言葉が頭に浮かんだ。一つは角度、いま一つはFLOWである。角度とは、ある高さから観る者に向かって下りてくるという、それぞれの作品が具えた構造から直感されるものであり、FLOWは、異なった角度を持って下りてくる石の表面から想像されるものである。さらに言えば、角度は空間的要素であり、FLOWは空間的であると同時に時間的要素でもある。角度があってこそFLOWは生まれるのである。清水のFLOWは、石という水とは対極的な素材で水の流れを表現するという破天荒さをも秘めながら、作品と向き合う我々を静かに宇宙的視座へと導くのである。
もちろん彼のほかにも石を素材として、水を主題に制作している彫刻家はいるが、その作品の多くは角度を持たない水平面に、風による波紋を表現したものである。したがって、そこにFLOWは存在しない。
 今回の展示には、木を主たる素材として、一見石の作品とは趣を異にする新作が出品される。この作品では、木は削ってその表面を白く着色しているものの、石に対しては、一転して在るがままで、彫らない、切らない、削らない、そして磨かないに徹している。水の流れに浮かぶべき木材に角度を持たせて設置することでFLOWに見立て、流れに棹刺すが如く何本もの鉄杭を打ち立て、また一方では、在るがままの大量の石塊を連ねるように乗せている。
 「私が、生活の中で情景を観ることと、それを基に造形することは、同次元のことだと考えている」。過日、清水と会った時の彼の言葉である。

浮遊する森から(2014年制作)
600×200×100cm 花崗岩、コンクリート

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森の出来事(制作途中)

清水朋文

【略歴】
1947
岐阜県に生まれる
1968
('69まで)グループ展(愛知県立美術館)
1970
岐阜大学 卒業
1971
同大学研究生 修了
1973
('80まで)一陽展に出品、'70から'80まで 同展会友(東京都美術館)
1977
('84まで)大垣市野外彫刻展(大垣市文化会館)
1984
岐阜アンデパンダンアートフェステイバル(岐阜県美術館)
1984
戦後生まれの作家たち・立体部門(岐阜県美術館)
1985
岐阜現代彫刻シンポジウム(岐阜市畜産センター)
1988
('08まで)池田野外彫刻展(県立池田高等学校)
1989
個展(ギャラリー安田)
1989
中津川市美術展(美術展賞)
1991
('96まで)グルッペ求展
1995
('01まで)石彫展・スパイラルアミューズ企画展(大垣市文化会館)
1996
('02まで)見たい見せたい美術展・歌となる言葉とかたち(古今伝授の里)
2008
飛騨高山現代美術展・里山フィールド(高山市国府町)
2009
('11まで)個展(岐阜徳洲会病院ロビー・常設入替5回)
2010
S+2×展(大垣市文化会館)
2010
べスパ・プリマベーラと作家たち展(極小美術館・監修 篠田守男)
2011
宇宙の連環として展(極小美術館・企画監修 篠田守男)
2012
象の檻展(極小美術館・企画監修 篠田守男)
※開催時点