Contemporary Art
極小美術館
Horie
Ryoichi
堀江
良一
2019.10/14(mon)~ 2019.12/1(sun)
No.31
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料
新たな絵画空間

堀江良一氏は、東京藝術大学卒業後美濃加茂に拠点を置き、日本版画協会を中心に発表してきた。
版画作品は鳥の子紙に刷られているが、油絵具を用いることにより、明快な色彩表現となっている。1980年代から現在まで続いている「弧のある風景」は、青い画面にくっきりと浮かぶ弧と円形が宇宙的なイメージをもたらし、果てしない世界に私たちを誘う。
そして版画作品と並行して進められているのが、油彩の絵画である。当初はペインティングナイフを用いて描いており、四角形を重ねたような形態が見えていた。版画作品の理知的な雰囲気とは全く異なった、筆跡をあらわにした情緒を感じさせる画面である。彼はマチエールというものに関心を持っており、ジョルジュ・ルオーやニコラ・ド・スタールに惹かれるという。絵の具を塗り重ねることによって、心の中のエモーショナルな部分を顕在化させ、絵というものの味わいをそのまま感じさせてくれるような作品は、確かにルオーやスタールを彷彿とさせる。しかし堀江氏は、歳を経て最近では、むしろ薄塗りの画面を試みるようになっている。セザンヌの作品にみられる薄塗りや塗り残しの手法を自らの作品に取り入れているのである。薄塗りだからといって、作品の力が損なわれるわけではなく、そこには厚塗りの作品にはない新たな空間が生まれている。
セザンヌも作品の中に遠近法とは異なった奥行き感を創出しているが、堀江氏の近年の作品も、画面の中に複数の空間、あるいは奥行きがあるように見え、不思議な絵画空間が生まれているように思う。それらの作品には白く塗り残した部分もあり、キャンヴァスの白が眼に眩しく飛び込んでくる。その白が不思議と魅力的なのである。
現代の絵画は、コンセプチュアルな方向と情緒的な方向という両極に分かれ、それぞれの道を歩んできた。人間に理性と感情がある限り、芸術の世界にも理性的なものと感情的なものが表れる。堀江氏の制作の中では、版画に見られる理性と油彩に見られる感情がともに存在し、一人の作家の中でうまくバランスをとっているように思える。しかしもしかすると、近年の油絵の中では理性と感情が融合して新しい空間を作り出しつつあるのかもしれない。
堀江氏は青春時代からピカソの青の時代を好んでいるとのことだが、版画、油彩に関わらずその作品に青をベースとしたものが多くみられる一因はそこにあるのであろう。ピカソの青は哀しみを感じさせる。しかし堀江氏の青はもう少し柔らかく、優しい。そして様々な諧調の青が存在する。堀江氏は青を通じて色彩の可能性をも探っているようである。
空間と色彩、両方の実験を続ける堀江氏の作品は少しずつ変化を続けており、今後も新たな展開がありそうな予感を抱かせる。ある作品で試みたことが偶然次の作品へのヒントになるという堀江氏の作品はこれからどのように変化していくのであろうか。

F30号 油彩・キャンバス(2019年制作)

F50号 油彩・キャンバス(2018年制作)

F20号 油彩・キャンバス(2018年制作)

F20号 油彩・キャンバス(2018年制作)

F10号 油彩・キャンバス(2017年制作)

堀江良一
- 【略歴】
- 1943
- 名古屋市に生まれる
- 1966
- 東京藝術大学 絵画科油画専攻卒業
- 1969
- 個展 (おいせ画廊 / 名古屋)
- 1969
- 日本版画協会展
- 1969
- 第14回CWAJ版画展にて佳作賞
- 1969
- CWAJ版画展 ※~73、78、80~93、95~03、05~09、11~17年
- 1970
- 個展 (養清堂画廊)※71年
- 1974
- 今日の版画63人展 (東京セントラル美術館)
- 1975
- 現代版画コンクール (大阪府民ギャラリー) ※79年
- 1976
- HAKU版画展 (ギャラリーはくぜん / 名古屋) ※~84年
- 1979
- サンシャイン版種別グランプリ展 (りゅう画廊) ※80年
- 1980
- 日本の版画6人展 (エディションズ画廊 / オーストラリア)
- 1980
- 個展 (ギャラリーはくぜん / 名古屋)
- 1981
- 版画グランプリ展 (日動画廊) ※85年
- 1982
- 個展 (ギャルリーユマニテ / 名古屋) ※84、87年
- 1982
- 個展 (ギャルリーヴィヴァン / 東京)
- 1983
- 岐阜現況展 (岐阜県美術館)
- 1983
- 中華民国国際版画展 (台北) ※85、89年
- 1983
- 現代版画 in NAGOYA (愛知県美術館) ※~89年
- 1984
- バーゼルアートフェス (スイス)
- 1984
- 第10回クラコウ国際版画ビエンナーレ (ポーランド) ※86、88、91年
- 1984
- 第11回イビザビエンナーレ (スペイン)
- 1985
- ニューヨークアートエキスポ ※86、87年
- 1987
- 個展 (ギャラリーF / 美濃加茂) ※88、92、97、04年
- 1987
- 日本現代版画展 (ウォーカーヒル・アートセンター / 韓国)
- 1990
- 現代版画名古屋 (愛知県美術館) ※~93年
- 1991
- 個展 (ギャラリーA・C・S / 名古屋) ※16年
- 1992
- 韓・日現代版画交流展 (新世界美術館 / 韓国)
- 1992
- 東海の作家たち (愛知県美術館ギャラリー)
- 1993
- 個展 (ギャラリーAPA / 名古屋) ※96年、00年
- 1994
- 中・日版画交流展 (国立歴史博物館 / 台北)
- 1995
- SAWA現代美術展 (ギャラリー沙和 / 名古屋) ※96年
- 1996
- 第3回高知国際版画トリエンナーレ展
- 1996
- 第11回国民文化祭とやま’96にて佳作賞
- 1997
- 岐阜・現代の美術 (岐阜県美術館) ※~02年
- 1997
- 第3回川上澄生美術館木版画大賞展 ※99年
- 2000
- 個展 (松欅堂 / 豊田) ※02、05、07年
- 2003
- 彩EXHIBITION (ギャラリー彩 / 名古屋) ※~11年
- 2003
- 個展 (ギャラリーなうふ / 岐阜)
- 2003
- 個展 (木曽路美術館 / 長野県木曽郡)
- 2004
- 日本の木版画100年展 (名古屋市美術館)
- 2004
- 個展 (北ビワコホテル グラツィエ・ギャラリー / 長浜)
- 2006
- 北ビワコ現代美術展 (北ビワコホテル グラツィエ・ギャラリー / 長浜)
- 2008
- 飛騨高山現代美術展 (ギャラリー遊朴館 / 高山)
- 2012
- 三幕の物語 郷土作家逍遥展 (岐阜県美術館)
- 2012
- 池田山麓現代美術展2012 (極小美術館)
- 2013
- 南アルプスミニチュア版画展にて南アルプス市長賞
- 2013
- 堀江良一展 版画・油彩 (美濃加茂市民ミュージアム)
- 2015
- 個展 (極小美術館) ※19年
- 2015
- 個展 (ギャラリーいまじん / 岐阜) ※17年
- 2017
- 岐阜の版画展 (岐阜県美術館)
- 2018
- 版画史と「私」 (美濃加茂市民ミュージアム)
- 【パブリックコレクション】
-
■ロサンゼルス・カウンティ美術館
■米国議会図書館
■国立国際美術館
■岐阜県美術館
■美濃加茂市民ミュージアム - ※開催時点