Contemporary Art
極小美術館
Esaki
Hidehiko
江﨑
榮彦
2017.10/8 (sun) 〜 2017.12/3 (sun)
No.25
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料
			雨の日に
 雨の日の交差点を、色とりどりの傘を手に行き交う人のいる風景。急ぎ足、ゆっくりと、あるいは道の向こう側に待ち合わせた人がいる。この場所には、行き来する人の動線が作り出す時間が交錯している。それは各々の人生の一端であり、同時にこの社会そのもの。すれ違う人の表情は持っている傘が代弁し、その傘の距離だけ近づいては、また離れていく。
 雨の日というシチュエーションに、時折、雨音の心地よいノイズが多重録音したかのように割り入ってくる。往来する人の流れを目で追っているとノイズが聞こえなくなり、日常の中にある物語のはじまりを予感させる。この描かれた音のある風景は、生活の中にある人間性がテーマとなっている。繁華街の一隅、人で溢れ賑わう何処かの街の風景なのだろうか。作家が一貫して描いてきたのは、途切れることのない人波から無作為に抽出することで見えてくる一瞬の有り様。通り過ぎる人々が垣間見せる邂逅(かいこう)、そうした日常の風景。それすらも無機質な暗い街の中へと消えていく。エッジの効いたデッサンに、自然の陰影に似せた明暗の挿し色は、流れていく日々の一場面を、一瞥するような一瞬の状況として見せている。画面にあるのは小さな個々のストーリーであり、周囲に及ぶようなハプニングは見い出せないが、そのまま毎日の延長というべき群像の趣とバランスを保っている。日常の一コマとしての出来事と他人に無関心な人々と。そういう意味では饒舌な絵である。
  ところで、横断歩道の縦線が消えたのはいつの頃だろうか。雨の日に傘を差して交差点を渡る人々の一瞬を捉えてきた画家の中で、街の風景が一変しはじめたのはいつからか。否応なく時代は過ぎ去り、描く風景もまたイメージの中で変容を遂げていく。
 近作は、行き交う人々を俯瞰する構図から、目線を同じくして横に視る構図へと表現の幅を拡げつつある。定型のフレームの中に収まりきらない、イメージするものを飛び出すかのように描いていく不定形な画面による構想や、幾何学的な構成への取り組みが目を引く。具体的な状況を表現することから、永続的、必然的な何かを表そうと転換していく過程が読み取れる。一過性の場面描写からの脱却とでも言えようか、日常生活の中で起こっている人間の本性を、状況描写しようとしている。そこに、抗うことなく今の自身の居場所を絵の向こう側でみつけられるか否か、虚構で終わらない、リアリティのある目指す絵画と向き合っている。新しい時間軸と空間軸を人混みの中に探すかのように。

積・乱・雲・夏
S130号(2016年制作)

まわり燈籠の絵のように
P150号(2011年制作)

ゆらめいて・かげろうのように
162.2×243.3cm(2014年制作)

江﨑榮彦
- 【略歴】
 - 1946
 - 2月、岐阜市に生まれる
 - 1966
 - 8月、第51回二科展に初入選 ※以後連続入選
 - 1967
 - 3月、岐阜大学教育学部美術工芸学科卒業
 - 1967
 - 4月、学校法人・済美学院に奉職
 - 1968
 - 3月、第18回中部二科展に初入選、新人賞受賞
 - 1970
 - 3月、第20回中部二科展で奨励賞受賞
 - 1970
 - 8月、第55回二科展で特選受賞
 - 1971
 - 4月、岐阜県立郡上高等学校教諭
 - 1979
 - 4月、岐阜県立可児工業高等学校教諭
 - 1980
 - 3月、第30回中部二科展で名古屋タイムス賞受賞
 - 1980
 - 8月、第65回二科展で会友推挙(無鑑査)
 - 1982
 - 4月、岐阜県立岐南工業高等学校・デザイン科教諭
 - 1985
 - 8月、第70回二科展で会友特賞受賞
 - 1989
 - 8月、第74回二科展で会員推挙 ※以後二科展の審査員となる
 - 1991
 - 4月、岐阜県美術館学芸課長補佐
 - 1992
 - 岐阜県職員採用大学卒程度試験問題作成員口述試験員に委嘱 ※96年まで
 - 1996
 - 4月、岐阜県立長良養護学校主事
 - 1997
 - 岐阜大学教育学部講師に採用
 - 1997
 - 11月、岐阜県知事より第14回国民文化祭岐阜県実行委員会委員に委嘱
 - 1998
 - 4月、岐阜県立多治見工業高等学校教頭
 - 2001
 - 4月、岐阜県立飛騨養護学校校長
 - 2002
 - 4月、関市立関商工高等学校長
 - 2004
 - 4月、岐阜県立関有知高等学校初代校長
 - 2004
 - 10月、全国高等学校美術工芸教育研究大会「2004岐阜」大会会長
 - 2006
 - 3月、岐阜県立教員を定年退職
 - 2006
 - 4月、中部学院大学こども学部教授
 - 2007
 - 4月、中部学院大学シティーカレッジ各務原講師 ※以後現在に至る
 - 2007
 - 「江﨑榮彦自選画集」を発刊
 - 2012
 - 9月、第97回二科展で会員賞受賞
 - 2014
 - 3月、中部学院大学子ども学部(現・教育学部)教授退職
 - 現 在
 - 公益社団法人二科会会員(審査員)、CBCクラブ会員 他
 - 【個展・グループ展】
 - 1984
 - 12月、岐阜市で個展開催 (アートサロンことぶき)
 - 1985
 - 6月、「岐阜現代の美術」に推薦 ※以後連続出品
 - 1990
 - 3月、二科会春季展に出品 ※以後毎年出品 (東京・松屋)
 - 1992
 - 10月、中部在住二科会員展開催 ※以後毎年開催 (加藤栄三・東一記念館)
 - 1994
 - 4月、名古屋日動画廊で中部の二科会員展を開催 ※1997年まで
 - 1994
 - 11月、愛知芸術文化センター開館記念「東海の作家たち」に招待出品
 - 1998
 - 7月、羽島市文化センター開館記念「郷土の作家達展」に招待出品
 - 2001
 - 4月、中電ビル開場記念展に招待出品
 - 2005
 - 6月、「愛知万博を描く」記念展覧会に招待出品
 - 2007
 - 9~10月、自選展開催 (岐阜市歴史博物館分館・加藤栄三・東一記念美術館)
 - 2010
 - 10月、「江﨑榮彦絵画展」開催 (岐阜市・ギャラリーいまじん)
 - 2012
 - 9月、「宇宙の連環展」出品 (池田町・極小美術館)
 - 2013
 - 9月、「リアリズムの深層展」出品 (池田町・極小美術館)
 - 2013
 - 11月、「第2回江﨑榮彦絵画展」開催 (岐阜市・ギャラリーいまじん)
 - 2014
 - 4月、「江﨑榮彦絵画展」を開催 (高山市・gallery満喜田)
 - 2016
 - 2~3月、伊勢神宮美術館特別展「人・歌会始め御題によせて」に選抜され出展 (三重県)
 - 2016
 - 4月、「第3回江﨑榮彦絵画展」開催 (岐阜市・ギャラリーいまじん)
 - 2017
 - 5月、「第2回江﨑榮彦絵画展」開催 (高山市・gallery満喜田)
 - 【コレクション】
 - 
		■中部学院大学関キャンパス・同各務原キャンパス
■岐阜市歴史博物館分館・加藤栄三・東一記念美術館
■岐阜県立多治見病院
■岐阜県総合医療センター
■はしもと内科クリニック 他 - ※開催時点