Contemporary Art
極小美術館
Yabashi
Shotaro
矢橋
頌太郎
2014.7/6(sun)~ 2014.9/21(sun)
espoir 11
観覧申し込みは090-5853-3766まで。入場は無料矢橋頌太郎のヴィジョン
激動の20世紀を過ぎて、絵画というジャンルは大きく変貌した。所謂再現描写から画家自身の思考の表明という側面が強くなったのは周知の通りである。その上カンヴァス(そうでない素材も増えたが)という平面上で何ができるかの実験場のようになるモダニズムの流れはまさに美術の本流としてそうした新たな価値を産むべく実験の繰り返しだったと言っても良いだろう。そうしたものがより評価される傾向はあるが、すべての画家が同じ実験場にいるわけではない。むしろ実際のところ画家の多くは極めて個人的な営みとして自らの内面に生起するヴィジョンを定着することに執着しているといっても良い。モダニズム的思考と個人的なヴィジョンとは必ずしも相反するばかりとは言えないが、意識のありようとしては隔たりがある。
さて、今回の矢橋頌太郎さんの絵画への取り組みを見てみると、やはり後者の側面が強いように感じられる。作品に見られる図像の多くには、頭を上から見た髪の毛が描かれている。それは彼自身の持っている他者に対する自らのポジションを強く暗示している。我々が日々通勤電車でも目にする光景を思い出させるのだが、シートに座って眠りこけた女性をその前につり革に掴まって見下ろしたとき、その女性がどのような容貌で、どんな生活をおくっているのだろうか?と想像を膨らませることにも似ている。しかし、彼女とは直接的な交流は無かっただろうし、以後も望んではいないのである。うつむいた女性の頭部を上から見下ろす像からは、見下ろした彼女とは決して視線は交わらないし、あくまでこちらの内面での一方的な拡がりだけがある。そうしたものがモチーフとしての人体から造形的な処理を施しながら心的風景へと繋げられている。心優しいこの画家は直接的な対人関係に恐怖しているのかもしれないが、一方で他者への関わりを望んでこうしたヴィジョンを表現しているようにも思える。
彼の家系には「書画骨董に親しめ」という家訓があるほど文化的な素地に恵まれており、幼い時から優れた美術工芸品に親しんできたことは彼の血肉になっている。山口薫らとモダンアート協会を創立した矢橋六郎も一族であり、そうした家風が理解できるだろう。もちろん彼はまだ完成された画家ではない。しかし過去の多くの画家の画業の初期に見せるヴィジョンがその後の展開の鍵になっていることが普通にあるように、今後の彼の制作活動がどのような展開を見せるにしても現在のそれは極めて重要な意味を持っているにちがいない。
missile(2008年)
toiletman(2008年)
bigbridge(2008年)
sunrise(2008年)
cascade(2009年)
lake(2009年)
Evening(2009年)
順応する子供(2010年)
通り道(2010年)
view-01(2011年)
view-02(2011年)
view-03(2011年)
view-04(2013年)
矢橋頌太郎
- 【略歴】
- 2007
- 3月 岐阜県立加納高校 卒業
- 2007
- 4月 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 入学
- 2011
- 3月 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 卒業
- 【展示略歴】
- 2010
- 1月 武蔵野美術大学OB展 (岐阜県立美術館)
- 2011
- 2月 武蔵野美術大学 卒業制作展 (武蔵野美術大学 学内)
- 2011
- 3月 五美術大学卒業制作展 (国立新美術館)
- 2012
- 9月 現代美術の新世代展で優秀賞受賞 選考・篠田守男筑波大学名誉教授、青木正弘前豊田市美術館副館長 他(極小美術館)
- 2013
- 9月 「リアリズムの深層」展 (極小美術館)
- 2014
- 7月 第1回個展 (極小美術館)
- ※開催時点